時をかける少女の冒険(前編)

副題:何故未来から派遣されたのが朝比奈みくるだったのか?

 

この間、大林宜彦監督・原田知世主演「時をかける少女」を初視聴しまして、これが筒井康隆原作を映像化したものや!と心躍りました。

時をかける少女」はラベンダーの香りなんです。ラベンダーの香りが切なくさせるんですよ。見ていて嬉しくなってしまったな。映像が情緒に溢れている。

この記事を読む方々の世代的には角川春樹版か細田守版が有名でしょうか?

 

なお、その細田守版は原作とは完全に別物です。

しかもラベンダーもなしですが、現代版「時をかける少女」がこの作品です。タイムループ物なのに「Time waits for no one」という言葉が登場するのがまた良いですね。だから令和版はまだ出てこなくていいぞ。

 

さて本題です。

副題:何故未来から派遣されたのが朝比奈みくるだったのか?

この問いに皆さんはどういう理由を思い浮かべるでしょうか。

 

先に断っておきますが、「萌えキャラだから」という理由は、全くその通りであるし極めてハルヒ的商業的にも的確なものになりますが、それでは考察もできないので片隅に置いておきましょう。

 

そして前提として断っておくことがもう一つ。

3年前(4年前)の七夕にはみくるちゃんがこの時代に派遣されていることが既に分かっているからとか、

みくるちゃん(大)がみくるちゃん(小)に指示して過去に派遣させたからとか、

過去に派遣されたことが既定事項説については否定しておきたいと思います。

 

それは何故か。

未来は変えることができるからです。

 

いや何言ってんのか分からんという話になりますが、ハルヒシリーズにおける未来は一本道でないことは作中で明示されています。

ということは、例えばみくるちゃんがSOS団での活動が黒歴史になっていて、大人になった時に過去の自分を派遣させることを阻止することができるという意味です。

みくるちゃんの行動自体は代わりの人でも可能なんですよ。過去でしなければならない行為という既定事項さえクリアできれば、誰がそれをしたかでみくるちゃん(小と大)のいる未来は変わらないのだから。

 

…え?説明が足りない?

パンジーが咲く花壇からメモリースティックを拾っても藤原からメモリースティックを渡されても、メモリースティックを手に入れるという意味では、結局既定事項を遂行できたよねってことです。キョンの心象はどうでもいいんです。

 

いやお前、未来は変わらないのか、変わるのかどっちだよという疑問が浮上します。

時間SFに明るくない私の例えで恐縮ですが、過程によって辿り着く結論が違えば未来は変わる…というイメージを持っています。

これ以上はご自身で詳細を検索していただけるとありがたいです。

 

では、そもそも何故未来人は過去に来たのかをおさらいしましょう。

 

「三年前。大きな時間振動が検出されたの。ああうん、今の時間から数えて三年前ね。キョンくんや涼宮さんが中学生になった頃の時代。調査するために過去に飛んだ我々は驚いた。どうやってもそれ以上過去に遡ることができなかったから」

また三年前か。

「大きな時間の断層が時間平面と時間平面の間にあるんだろうってのが結論。でもどうしてその時代に限ってそれがあるのかは解らなかった。どうやらこれが原因らしいってことが解ったのはつい最近。……んん、これはわたしのいた未来での最近のことだけど」

(中略)

「わたしは涼宮さんの近くで新しい時間の変異が起きないかどうかを監視するために送られた…ええと、手頃な言葉が見つからないけど、監視係みたいなもの」

         出典:「涼宮ハルヒの憂鬱」より

 

 

みくるちゃんのこのセリフから、涼宮ハルヒによって、みくるちゃんがいた時間平面から遡行できる過去が変容してしまう可能性を示唆していることが読み取れます。

みくるちゃんによれば、彼女の任務はハルヒによる時間変異の監視です。

 

それでは問題です。

何のために時間変異の監視をしなければならないのでしょうか。

 

ちなみに長門は、

 

「彼女は彼女が帰属する未来時空間を守るためにこの時空に来ている」

何だか、重大なことをサラリと言われたような気がする。

涼宮ハルヒ朝比奈みくるの時空間にとって変数であり、未来の固定のためには正しい数値を入力する必要がある。朝比奈みくるの役割はその数値の調整」

          出典:「涼宮ハルヒの溜息

 

 

と言っていますが、ちょっと待ってください。

 

過去の変容によって未来が変わるのを防がなくてはならない?

これ、変だと思いませんか?

いや長門の言ってることがおかしいと言っているわけではありません。

 

何故なら、ハルヒシリーズにおける時間SF理論に鑑みると、過去に遡らなければ未来人には関係がないからです。

現在が変われば、その時間線上に連続する未来が影響を受けます。

しかしその影響とは、現在のハルヒ達が生きる時間平面が別の時間線に接続されることだと考えられます。つまり未来の時間平面自体には関係がありません。

未来人の時間平面が消えるわけではないですよ。なら過去がどうなろうがほっときゃいいじゃん。

…もしかしたら時間理論の解釈が違うかもしれませんがこのままお付き合いください。

 

だとすれば、現在を未来に固定させなければいけない理屈とはなんでしょう。

 

それは先程ちらりと書きましたが、

ハルヒのいる時間平面にみくるちゃんがいるからこそ、みくるちゃんのいた時間平面のある時間線に未来を固定しなければいけないのです。

でないとみくるちゃんが未来に帰れなくなってしまうから。

 

他にも考えられる理由としては、TPDDの構造的欠陥によるものではないでしょうか。

 

時間平面を3次元方向に破壊しながら遡行するTPDDの性質上、一度でも過去に遡行してしまったらその破壊された過去を修復する必要が出てきてしまう。ケチのつき始めのドミノ倒し。その倒してしまったドミノを修復するために、朝比奈みくるちゃんはハルヒのそばにいて、現在の時間平面を自分のいた未来へ接続するためにいることになります。

それ以上の理由があるならば…作中未登場か、あるいは私の解釈不足です。

 

でもみくるちゃん(大)は驚愕でこんなこと言ってますね。

 

「ポツリと、この時空平面から自分たちの未来までの時空連続体をまるごと書き換えたとしても、どうせ一つに収斂されるのに――と、本音らしき言葉をこぼしてまして」

       出典:涼宮ハルヒの驚愕(後)

 

 あんた、未来は変えることができると言いつつ、どうせ一つに収斂されるとはどういうことや

 

なんとなく、藤原がそんなことしても、その後の未来にとっては些末な出来事にすぎないので未来は変わらないと言ってるように思えるんですが、よろしければどなたか私にご教授頂けるとむせび泣きます。

 

さて。この記事がこんなに長くなるとは思いませんでした。

しかも現時点でこれ書くまでに3日要してるぞ。

 

ところで、今までずらづらと書き連ねてきた朝比奈みくるちゃんの任務は、彼女でなければならなかったのでしょうか。

任務だけなら代替可能のように思われます。

 

何故みくるちゃんでなくてはいけなかったのか。

 

次回、最初の疑問に戻って考察したいと思います。

 

記事の元ネタ

タイトルの元ネタ

時をかける少女 (角川文庫)

時をかける少女 (角川文庫)