夏への扉(前編)

副題 長門の理想とは?キョンの理想とは?

 

涼宮ハルヒシリーズの中でも傑作と名高い「涼宮ハルヒの消失」を題材に。

本当に素晴らしい物語です。このタイトルの元ネタでもある時間SFの金字塔、ロバート・A・ハインライン著「夏への扉」に匹敵する疾走感です。…言い過ぎだろうか?

 

AmebaTVで現在(2020年1月15日現在)放送しているのは皆様ご存じでしょうか。

abema.tv

放送が終わる前に記事を投下したいと思います。

やっぱ時節には乗りたいじゃん。

 

長門の理想とはなんぞや?

そもそも世界を改変しなければならなかった理由とは?

 

『わたしのメモリ空間に蓄積されたエラーデータの集合が、内包するバグのトリガーとなって異常動作を引き起こした。それは不可避の現象であると予想される。わたしは必ず、三年後の十二月十八日に世界を再構築するだろう』

そして淡々と、

『対処方法はない。なぜならそのエラーの原因が何なのか、わたしには不明』

俺には分かる。

       出典:「涼宮ハルヒの消失」より

 

キョンの言う通り、プログラム通りにしか動けない人工知能でも、そんな回路が入っていないロボットでも、時が来たらそいつを持つようになるもので、それが感情ってやつならば。

 

積もりに積もった感情の集合体が、世界を改変しようと長門を動かせた。

 

ではその感情とは?

キョンが好きすぎて」って言うなよ。長門の頭はそこまで恋愛脳じゃないだろう。

…と喧嘩腰になるつもりは全くありません。

でもここで結論出しちゃったら語れなくなるんで横に置いときます。

 

自由自在になんでも変えられる力を手にしたとき、それを行使する対象は三つに分けられます。

自分と他者と世界の物理法則です。

その動機の大半は、程度の差こそあれど「理想のものに変えたいから」というものになるでしょう。

今よりマシな現実世界にしたいから自分、他者又は世界を改変するわけです。

それができないから異世界に転生してワンチャンなんて望んでしまう。いや某ジャンルの悪口ではないです。

 

今回長門は全てを改変した。自分も皆も世界も変えたかった。

SOS団無くすわ、ハルヒと古泉を北高から飛ばすわ、そもそも超常現象を無くすわ。

かくいう自分は文芸部室でひっそりと本を読む少女になった。

 

変えたのは皆のプロフィールぐらいで人格までは変えていないようです。

環境変われば人格にも多少影響は出るものですけどね。ここでは置いときましょう。

 

文芸部室でひっそりと本が読みたいだけなら、五月頃文芸部室に突撃してきたハルヒに「部室貸して」「ヤダ」と言った史実に改変すればいい。でもそうしなかった。

 

ハルヒが邪魔でキョンが好きで一緒にいたいなら、ハルヒを北高から飛ばしてキョンを文芸部所属にした状態に改変すればいい。でもそうしなかった。

 

超常現象に疲れていたなら、ハルヒパワーをかすめ取った後にそのパワーを消滅させてSOS団だけはそのままにすればいい。でもそうしなかった。

 

最も曖昧な結論になりますが、感情は一つじゃない、ということでしょう。

 

お前は無感動状態が基本仕様だから尚更だったんだろう。たまには喚いたり暴れたりお前なんかもう知らんと言いいたかったことだろう。いや、こいつがそう思わなかったとしても、そうすべきだったのだ。そうさせてやるべきだったのだ。

          出典:「涼宮ハルヒの消失」より

 

キョンが言っているのはストレスの解消法です。長門に負担をかけておきながら、そんな長門には感情の捌け口がどこにもなかったから、ぶつけてやる場所を作らなきゃいけなかったのだと。

そりゃ15532回も夏休みを繰り返されれば誰だって狂うわい。

これは長門の感情の一つです。退屈でうんざりで、ハルヒお前勘弁しろやの強制ループ。

 

「わたしはあなたに会ったことがある」

付け加えるように、

「学校外で」

どこだ。

「覚えてる?」

何を。

「図書館のこと」

        出典:「涼宮ハルヒの消失」より

 

 長門が改変された世界に持って行った唯一の思い出です。

SOS団が存在しないから辻褄が合うように改変された記憶ですが。

長門の仕事は観測行為ですから、仕事から外れた行為である読書は長門の趣味です。

無口キャラは読書が好きでなければならないというキャラ設定でもない。ハルヒがそんなキャラを望んだわけでもない。誰の思い込みだそれは。

 

長門は嬉しかったのだろう。

その趣味に適確な場所に連れてってくれたキョンに感謝の気持ちを伝えたかった。

感情を伝えられる女の子になりたかったのかな…。

 

長門は感情を他者に伝えることがこれまでほとんどなかった。

対コンピ研戦で怒った時ぐらいでしょうか。インチキされてムカついたから勝ってやると思わなきゃキーボードガタガタ動かさんしね。観測行為から一番外れた行動と言える。

 

 

しかしそれだけじゃあないんですよね。

 

それだけなら、白紙の入部届を渡さなくたっていい。

キョンにお礼言うだけなら家にまで来させなくてもいい。

朝倉が来て帰ろうとしたキョンを引き留める必要もない。

キョンが文芸部にまた顔を出すと言って微笑む理由もない。

キョンに非日常か日常がいいか選択させるだけなら、長門自身が普通の女の子に変わる必要はない。

 

普通に恋愛もする女子高生にもなりたかった、ということも考えられるでしょう(キョンと付き会いたい女子高生ではない。ここ重要)。

図書カード作ってくれた記憶だけを持ってるなら、キョンはただの優しい男子高校生なだけ。それだけで惚れることは…まああるかもしれない。

 

他にも上げていけばキリがないんですが、記事が長すぎるので次の機会に譲りたいと思います。

 

最後に。

何故ハルヒを北高から飛ばしたのか。

これは当執筆者の思いですが、ハルヒが邪魔だったとは思いたくないんですけどね…。

 

非日常の権現、あらゆるトラブルの原因であるSOS団を無くしたかったのか?

あるいは感情が累積する原因がハルヒで、感情を泡立てる原因を遠ざけたかったのか?

迷惑千万なハルヒが北高にいなけりゃキョンが喜ぶと思ったからか?

自分の恋愛に邪魔だったからか?

 

あらゆる面から考えて「ああ長門さん邪魔だったんやな」という悲しき結論に到達するわけですが…。

 

光陽園学院という中途半端な場所を選んだ(わざわざお嬢様学校から進学校に変えている)のは、理性と願望の狭間の改変のように思います。

 

 

次回は夏への扉(後編)です。サブタイのキョンの理想とは?です。

せめて消失の放送が終わるまでに書きたいぜ…。

 

記事の元ネタ(朝倉表紙の奴が見つからないのは何故や)

涼宮ハルヒの消失

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タイトルの元ネタ

夏への扉 (ハヤカワ文庫SF)

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